アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリと言えば、『星の王子さま』の作者として知られている。
彼は文学者であると同時に、飛行士でもあった。郵便飛行や新航路確立に活躍し、そのときの体験をもとに『人間の土地』、『夜間飛行』などの作品も執筆している。
多くの人は「どうすれば幸せになれるか」と考えがちである。幸せになるための秘密がどこかにあって、それを知っている人物や書物に答えを求める。
しかし、サン=テグジュペリはこれに異を唱える。そもそも他人に問うことではない、自分で考えて見つけ出すことでないか、と。サン=テグジュペリは、人生においてすべてのことは自分に帰するという信念を持っていたからだ。それゆえ、自分の中にあるものをいかに用いるかが大事であり、「いかなる人間が幸福なのか」と自らに問いつづけることが正しいと考えていた。
では、そうして問うて問うた先に、彼が達した結論はどういうものだったろうか。それは本書が取り上げている「よき人」の人物像を、サン=テグジュペリの認識から明らかにすることでもある。『星の王子さま』以外にも目を向けて彼を探求してみたい。
(『よき人々の系譜』より)
1900年 フランス・リヨンで生まれる。
1921年 ストラスブール第2飛行隊に入隊。飛行免許取得。
1923年 プールジェ飛行場で事故。飛行隊除隊。
1926年 ラテコール社に入社し、郵便飛行のパイロットになる。
1927年 リオ・デ・オロのキャップ・ジュビーの飛行場長就任。
1929年 『南方郵便機』出版。アエロポスタ・アルヘンティーナの支配人就任。
1931年 コンスエロ・スンシンと結婚。『夜間飛行』出版。フェミナ賞受賞。
1934年 エール・フランス社入社。
1935年 パリ=サイゴン間の遠距離飛行に失敗し遭難。
1938年 グアテマラの空港で事故、生死をさまよう。
1939年 『人間の土地』出版。アカデミー小説大賞受賞。33-2偵察飛行部隊配属。
1940年 渡米。アメリカ図書賞受賞。
1942年 戦争勃発で『戦う操縦士』出版。
1943年 『星の王子様』出版。33-2偵察飛行部隊に再入隊。
1944年 偵察飛行中に消息を絶つ。44歳で死去。
(考え)常識の枠にとらわれず、何ごとも自分の心に忠実に従う。
(結果)飛行機乗りも執筆も自分のやりたいことをやりたいようにした。
ジッド
飛行機に乗ることが生きがいだった。事故を起こし怪我を負っても、また乗りたいと思ったら絶対あきらめない。研修時代には格納庫から勝手に飛行機を拝借したこともある。
サン=テグジュペリ(齋藤孝選・訳)『サン=テグジュペリ 星の言葉』(大和書房、2006)
(サン=テグジュペリの語録集)
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山崎庸一郎『サン=テグジュペリの生涯』(新潮社、1971)
(日本語の文献としては貴重なサン=テグジュペリの伝記)
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稲垣直樹『「星の王子さま」物語』(平凡社、2011)
(『星の王子さま』制作時に焦点を当てた評伝)
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齋藤孝『齋藤孝の天才伝2 サン=テグジュペリ』(大和書房、2006)
(サン=テグジュペリの生涯、考え、偉大な点などを知ることができる格好の入門書)
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阿部祐太著『よき人々の系譜』(阿部出版)
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サン=テグジュペリ(山崎庸一郎訳)『戦う操縦士』(みすず書房、2000)
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サン=テグジュペリ(堀口大學訳)『人間の土地』(新潮社、1955)
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サン=テグジュペリ(杉山毅訳)『サン=テグジュペリ著作集5 手帖』(みすず書房、1984)
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安野光雄、森毅、井上ひさし、池内紀編『機械のある世界(ちくま文学の森11)』(筑摩書房、1988)
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サン=テグジュペリ(内藤濯訳)『星の王子さま オリジナル版』(岩波書店、2000)
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サン=テグジュペリ(堀口大學訳)『夜間飛行』(新潮社、1956)
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